セバスチャン・ベッテルは2年連続のチャンピオンにふさわしいドライバーだが、シューマッハ時代のようなF1支配はあり得ないと、デイビッド・クルサードは語る。
レース終了後は東京へ直行したので、セバスチャン・ベッテルが約束を守って、日曜日の夜は一晩中パーティーしたのかどうかは分からない。
でも、月曜日に横浜で行われた記者会見で彼に会うと、上の写真のように、ぼくの頬にキスをしてきた。よほど飲み過ぎたんだね。
彼は良く頑張った。羽根を伸ばしたっていいさ。今シーズンのセブはほとんどミスを犯さなかった。イエガーボムでも、メカニックたちが並べた飲み物でも、少しぐらい飲んだってバチは当たらない。
2年連続のタイトル獲得は普通ではあり得ないことだ。一番速いクルマに乗っていたというだけで片付けられる話でも、過小評価されるべきものでもない。
「問題は、セバスチャンとレッドブルがどれだけこれを続けられるかだ」
ドライバーは目の前にあるレースを戦うしかない。セブは毎週のように好成績を残し、世界トップクラスのドライバーのマーク・ウェバーが平均的なドライバーに見えることさえある。
問題は、彼とレッドブルがどれだけこれを続けられるかだ。
すでに、フェラーリ・シューマッハ時代のようなF1支配の再来だという囁きも聞こえて来る。次の10年はレッドブル・ベッテル時代になるというのだ。
セブはまだ24歳で、チームとは長期契約を結んでいる。テクニカル・オフィサーのエイドリアン・ニューイーとチーム代表のクリスチャン・ホーナーも同じような契約をミルトンキーンズと結んでいる。土台はある。
2009年のブラウンのダブルディフューザーを除く他の出場車両にとっては悲しいことだが、セブが今から3年連続のタイトル獲得を祝っていたとしてもおかしくはない。
「フェラーリとシューマッハのクルマは速かっただけではなく、信頼性が高かった」
だが、2000年代初頭のフェラーリのように、レッドブルが圧倒的な強さを維持できるとは思わない。当時は今とは条件が大きく異なるからだ。
まず第1に、他のチームが頭脳と専門知識を駆使しても理解できていなかったことを、フェラーリは理解していた。だから、彼らは1990年代後半から2000年代初頭にかけて、速いだけではなく信頼性の高いクルマを作ることができた。それが、彼らの成功の土台だった。でも、今ではどのチームも信頼性の高いクルマを作っている。
第2は、当時、フェラーリはライバルよりも多くの資金をつぎ込むことができた。無制限にテストが行えた時代に、ムジェロにテストコースを持っていた。当時はミシュランとライバル関係にあったブリヂストンが、ミハエルのためにカスタムメイドのタイヤを作っていた。それに対抗できるチームはなかった。
今はシーズン中のテストは禁止だし、全員が同じタイヤサプライヤーのタイヤを使っている。レッドブルにライバルよりも資金力があったとしても、リソース制限協定によって人員数やレースにチームが使える金額は制限されている。資金力は問題にはならない。
第3は、ミハエルが明らかにフェラーリのナンバー1ドライバーだったことだ。全てが彼のために準備されていた。チームメイトが彼のためだけに走っているなんてことも珍しくなかった。レッドブルに対していろいろ言う人もいるし、チームがベッテルをひいきしていると感じる人もいるかもしれないが、マークに対する平等な扱いや、彼に平等なチャンスが与えられていることに疑問を持つ人は少ないだろう。
「ニューウィーは、またしても、誰よりも革新的なクルマを作れることを証明した」
そして最後に、おそらくこれが一番重要なポイントだと思うが、今は比較的ルールが安定している。ここ3年間、レッドブルが優勢を誇っているのは、2009年に行われた大規模なルール変更に、ニューウィーが誰よりも利口に対応したからだ。
ニューウィーは、またしても、白紙の紙を手渡されれば誰よりも革新的なクルマが作れることを証明した。
しかし、2012年へ向けての変更は最小限だった。大きな変更で一番ダメージを負うのはレッドブルだろう。レッドブルが真っ先に開発し、その後、他のチームが真似したブロウンディフューザーの禁止も痛手だった。
これは‘レッドブル時代’の幕開けではない。この2年間も、シューマッハが6戦を残してタイトル優勝を決めた2004年や2002年とはほど遠い。
現在でもサーキットでは熾烈な戦いが続いている。レースを見ればわかる。日曜日も、トップ4台の差は10秒以下だった。そして、グリッドには5人の世界チャンピオンが並んでいる。
Jenson Button celebrates winning in Japan with girlfriend Jessica Michibata (© McLaren)ああそれと、気づいていない人がいるといけないから書いておくけれど、レースに優勝したのはマクラーレンのクルマだ。すでに書いた通り、レース終了後は東京へ飛んで、今回のレース優勝者のジェンソン・バトンを含む何人かのドライバーたちと一緒に時間を過ごした。みんなが歌ったり、くつろいでいる様子を見ることができて最高だった。
ぼくたちは、新しいF1の黄金期の真っ只中にいるのだとぼくは思う。これは、1チームだけが優位だった不遇の時代とは違う。
今年のセブとレッドブルは誰よりも良い仕事をしただけだ。拍手を送られるべきで、非難されるべきではない。
デイビッド・クルサードは英デイリーテレグラフ紙に寄稿すると共に、BBCのF1コメンテーターを務めています。また、彼はレッドブル・レーシングの親善大使です。
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